東京都では、青少年の性をめぐる課題については、これまで1988年、1997年の青少年問題協議会で議論され、淫行の定義が不明確であることや、犯罪の正否が当事者の主観的要素に依存する度合いが強いことなどが指摘されてきました。東京都は、議論を踏まえ、青少年の自己決定権を尊重する観点から淫行処罰には否定的な立場をとってきました。
レイプや性虐待などは当然、犯罪であり、大人を処罰する規定としては、児童福祉法や児童売春禁止法などの法規制で対応は可能です。提案された条例改正案では、何をもって反倫理的な行為とするのか曖昧であり、恣意的な判断への懸念があります。また、大人への処罰としながらも関わってしまった子どもが被疑者のように扱われたり、偏見をもたれたりすることに危惧を抱くものです。
江戸川区でも、1996年の文教委員会において、条例改正に反対する陳情が提出され、東京都の条例改正に対する議論が行なわれました。主に、淫行処罰規定や不健全図書類の指定に関するものでした。江戸川ネットは、特に、淫行処罰規定に関して、18歳未満の子どもたちを性犯罪に巻き込むことへの懸念や、プライバシーの侵害、人権侵害にも及ぶことなどから、この規定を盛り込むことに反対する意見を通しました。
青少年に正面から向かい合い、低年齢の性行為へのリスクを正しく伝えることなく、いたずらに条例改正を重ね罰則規定を設けても、青少年の性をめぐる問題の解決には至りません。自己決定を育むための科学的な性教育やメディアリテラシーなどの方策も早急に実行されなければなりません。次世代への影響が多大な課題に関しては当事者である青少年の意見に耳を傾け、慎重な議論を実施すべきだと考えます。